「親の通院に付き添ううちに、これを仕事にできないかと思った」
「介護の現場にいて、送迎で困っている人を何人も見てきた」
介護タクシーの開業を考える方は、こういうきっかけで動き始める人が多いです。やりがいのある仕事ですが、始めるには国の許可が必要で、要件もそれなりにあります。このページでは、沖縄で介護タクシーを開業するために最初に知っておきたいことを、できるだけ実務に沿ってまとめました。
介護タクシーとは(福祉輸送事業限定)
「介護タクシー」は通称で、正式には一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)といいます。道路運送法にもとづく許可が必要な事業で、現場では「4条許可」とも呼ばれます。
ざっくり言うと、体の不自由な方や高齢の方の移動を、料金をもらって担うタクシーです。普通のタクシーと違って乗せる相手を限定するかわりに、開業のハードルが一般タクシーより大きく下げられています。たとえば普通のタクシーは複数台そろえないと始められませんが、介護タクシーは車1台から開業できます。
乗せられるのは、おおむね次のような方とその付き添いの人です。
- 身体障害者手帳を持っている方
- 要介護・要支援の認定を受けている方
- その他、知的・精神の障害などで、一人で公共交通機関を使うのが難しい方
- 消防や救急コールセンター経由で搬送を依頼された患者さん
もうひとつ普通のタクシーと違うのは、流し営業や駅前の客待ちができない点です。道で手を挙げた人を乗せるのではなく、必ず電話や予約など営業所を通して受け付ける形になります。
どうすればいい?
まず「有料で人を運ぶ事業なんだ」と押さえておくこと。無償の送迎ボランティアとは別物で、対価をとる以上は必ず許可がいります。
開業に必要な要件
許可を取るためにおさえる要件は、大きく「人」「車・免許」「お金」「場所」の4つに分けられます。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 人(運転者) | 第二種運転免許が必要。福祉車両(リフト・スロープ付きなど)なら二種免許だけでOK。セダン型で行う場合は、これに加えて介護福祉士・訪問介護員などの福祉系資格(ケア輸送サービス従事者研修の修了でも可)が必要 |
| 車 | 福祉車両またはセダン型。最低1台から開業可能 |
| お金 | 「所要資金の50%以上」かつ「事業開始当初に要する資金の100%以上」の自己資金を、申請日以降ずっと確保していること。申請日前1週間以内の残高証明書で証明する |
| 保険 | 対人8,000万円以上・対物200万円以上の任意保険(または共済)に、使う車すべてが加入する計画があること |
| 場所 | 営業所・休憩仮眠施設・車庫を用意する。借りる場合は1年以上の使用権限(賃貸借契約や使用承諾書)が必要 |
セダン型を選ぶときは、福祉資格が無いと申請が通らない点に注意してください。福祉車両なら資格無しでも始められるので、ここはどちらで開業するかの分かれ目になります。
どうすればいい?
自分が「福祉車両でいくのか/セダン型でいくのか」を最初に決めること。これで必要な資格も、車にかける費用も変わってきます。
許可までの流れ
申請から営業スタートまでは、ざっくりこの順番です。
- 書類をそろえて申請(沖縄本島の場合、浦添の陸運事務所の輸送部門へ提出)
- 運輸局の審査(標準で2か月ほど。実際は補正などを含めて4〜5か月みておくと安心)
- 許可書の交付。このとき許可後の手続きについて窓口から説明があります
- 登録免許税3万円を納付(渡される納付書の期日までに)
- 事業用ナンバー(緑ナンバー)の取得・任意保険の加入
- 運輸開始届を出して営業開始
許可が下りてからおおむね6か月以内に事業を始める義務があります。だらだら準備していると期限が来てしまうので、許可後は一気に動くつもりでいてください。
なお、沖縄では運賃や法令試験の運用に地域差があります。沖縄での申請にあたって法令試験があるかどうかなど、細かい運用は管轄の窓口で確認するのが確実です。
どうすればいい?
申請の前に「いつ営業を始めたいか」から逆算する。許可まで4〜5か月+準備期間を見て、ゴールから日程を組むとスムーズです。
費用の目安
開業全体でかかるお金は、車両をどうそろえるかで大きく変わりますが、一般に250〜450万円程度といわれます。内訳のイメージはこんな感じです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 福祉車両(中古〜新車) | 100〜300万円ほど。手持ちの車を改造する手もある |
| 登録免許税 | 3万円(許可後に納付) |
| 任意保険 | 事業用なので自家用より高め。年額で数十万円規模 |
| 営業所・車庫 | 自宅を使えれば抑えられる。借りる場合は家賃が上乗せ |
金額は車両の選び方しだいで上下します。自宅を営業所にして中古の福祉車両から始めれば、もっと安く抑えることもできます。
介護保険を使えるようにするには
ここはよく誤解される点です。介護タクシーの許可(4条許可)だけでは、介護保険は使えません。この状態だと、利用者が運賃を全額自己負担する形での送迎になります。
乗り降りの介助に介護保険を効かせたい(いわゆる「介護保険タクシー」にしたい)場合は、別に訪問介護事業所の指定を受ける必要があります。この指定には法人格が求められるため、個人事業のままではできません。
まず4条許可で自費の介護タクシーとして始めて、軌道に乗ってから法人化と訪問介護指定に進む、という順番で考える人も多いです。会社の設立そのものや税務は行政書士の範囲を超えるので、その段階になったら司法書士・税理士とも連携して進めることになります。
自分でできる人/プロに任せた方がいい人
自分で申請できそうな人
- 書類づくりや役所とのやり取りが苦にならない
- 開業まで時間に余裕があり、補正で差し戻されても自分で粘れる
- すでに福祉車両も場所も決まっていて、要件をほぼ満たしている
プロに任せた方がいい人
- 本業や開業準備で手いっぱいで、書類に時間を割けない
- 資金計算や残高証明のタイミングなど、つまずきやすい所を確実に通したい
- セダン型でいくか福祉車両でいくか、資格の要否から相談したい
よくある質問
個人でも開業できますか?
できます。要件さえ満たせば、個人事業主が一人で開業することも可能です。ただし介護保険を使えるようにするには法人格が必要になるので、将来そこまで考えているなら最初から法人で始める選択もあります。
普通免許しか持っていませんが大丈夫ですか?
運転して営業するには第二種免許が必要です。普通二種を取ってから、あるいは取得と並行して準備を進める形になります。
許可が下りるまでどれくらいかかりますか?
審査だけで標準2か月、書類準備や補正を含めると4〜5か月が目安です。開業希望日から逆算して動き始めるのがおすすめです。
「自分の場合はどうなるか」を一度整理したい方へ。
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